高麗を亡国とし、李氏朝鮮が開国された後、当時、開城にあった都を、初代国王の李成桂(イ・ソンゲ)は、漢陽に遷都しました。
この遷都には、どんな意味があり、なぜ、行われたのでしょうか?
ある史実を基にした韓国歴史ドラマ「龍の涙」に、この遷都のせいで、”王の嫡子の長男が、李氏朝鮮の国王になれなくなった理由!”
として描かれた場面があります。
李氏朝鮮の誕生
一つの国が滅び、新しい国が開国されるためには、そこには大きな犠牲が伴います。
高麗末期、民は搾取で瀕死の状態で、元(中国)に脅かされた高麗は、国王の権力も弱く、朝廷の最高権力者がすべてを牛耳っている状態でした。
多くの貧困の民が、この苦しみから逃れたい!
そんな気持ちを抱えていた時、一人の儒学者鄭道伝(チョン・ドジョン)が、新しい国を建て、民の幸せのための国を開きたい!
そんな夢を描いて、新しい国の国王として、李成桂(イ・ソンゲ)を選び、一緒に謀反を起こそうと近づきます。
李成桂(イ・ソンゲ)は、辺境を守る武将で、弓の名手でもありました。
辺境をしっかり守り抜き、そして、辺境で暮らす民にも信頼が厚く、誠実な人柄だったからです。
新しい国の国王は、民の信頼が無ければ意味がない。
その理想像に、まさにぴったりの人物だったのです。
しかも、いくら弱体化していても、高麗を潰すためには、王宮を守る軍を破れるほどの軍隊と将軍が必要なわけで、辺境で実践を伴って強く鍛え上げられていた李成桂(イ・ソンゲ)の軍は、この条件も満たしていたのです。
しかし、最初は、李成桂(イ・ソンゲ)は、乗り気ではなく、謀反は断っていましたが、5男の李芳遠(イ・バンウォン)だけは、この計画に魅かれていました。
李芳遠(イ・バンウォン)は、兄弟の中で、唯一、高麗朝の科挙に合格するほど、勉学にも優れた知識と能力を持っていました。
そのため、父親の李成桂(イ・ソンゲ)が王となれるように、鄭道伝(チョン・ドジョン)とともに、大きな活躍を成し遂げていきました。
高麗を潰すためには、多くの人たちを殺さなくてはならず、その仕事(暗殺や殺戮)も積極的に関わっていきました。
罪の無い人の多くの殺戮と暗殺
王宮の占拠に成功した後は、王位を奪い、王昌と王禑、後に、恭譲王の3人の王を処刑。
高麗朝廷の高官で開国に反対するであろう者の殺傷簿を作り、深夜、高官たちを高麗王の名で王宮に呼び出して、殺傷簿に名前のある官僚を、次々と殺していきました。
その他にも、朝鮮王国の開国に伴い、高麗の王族と「”王(ワン)氏”という姓」(※王族の姓が”王”だったため)の人たちは、全員島流しにすると偽って船に乗せられ、途中、海の真ん中で船を沈め、皆殺しにもされました。
その数は、500人とも、それ以上とも言われています。
そのような大量殺戮に反対の意を唱える儒学者や、新王朝への出仕を拒否した同志が杜門洞に蟄居すると、集まった儒学者が住む村と多くの儒学者を火攻めにして、皆殺しにされました。
朝鮮王国という国を建てるために、罪のない多くの人たちが次々と犠牲になりました。
もともと人柄の良い李成桂(イ・ソンゲ)は、このような大量殺人を繰り返すたびに、苦しんでいた面もありましたが、その自分を責める気持ちからなのか、それとも、恨みが大きすぎたのか、
李成桂(イ・ソンゲ)が開城の王宮に初代王として入宮した後、宮殿において、悪霊に追われて気が休まらない・・・!
と、鄭道伝(チョン・ドジョン)に訴えました。
悪霊が毎晩、自分の枕元に出てくるので、この宮殿をすぐにでも出たい!
と言うのです。
この宮殿は、大量殺人により血で染められ、しかも、この宮殿の主たち王氏一族を海で大量に殺しているのです。
本当に、恨む魂もたくさん宮殿にいたかもしれせん。
実は、開城の都では、民にも恨みを買っていたため、生活面や科挙の実施にも悪影響が出ていたのでした。
そこで、鄭道伝(チョン・ドジョン)は、思い切って遷都をしましょう!
と、新しい都として、また風水的にも相応しい場所を急いで探しました。
それが、漢陽の都になります。
漢陽の宮殿に問題点が浮上!
多くの僧も動員し、急いで宮殿を建築しました。
宮殿の建造に合わせ、都に移り住む人たちの住居なども建てていきますが、
ほとんど宮殿の建築が終わる頃、あることを指摘されました。
「風水的に、宮殿の建つ向きが良くない!」
とのことでした。高僧に、
「この入口の向きを変えないと、今後、長男が王になるのは難しい」とまで言われたのです。
しかし、李成桂(イ・ソンゲ)にも早く転居したいと急かされており、作り直すのは難しい!
と、そのままの状態で宮殿を使い、風水的な物を置くことで、その悪い運気をカバーすることにしたのです。
そして、念願の遷都!
新しい国=朝鮮王国の都「漢陽」が誕生しました。
朝鮮の君主在位期間と出生一覧
その後、1392年から1910年にかけて、518年朝鮮王国が続きましたが、26人の王のプロフィールを見てみると、
朝鮮王名 | 姓・諱 (在位期間) |
家系・不幸なエピソード | |
初代王 | 太祖 | 李成桂 (1393-1398) |
※七男・八男と開国功臣を太宗に殺される |
第2代王 | 定宗 | 李曔 (1399-1400) |
次男 |
第3代王 | 太宗 | 李芳遠 (1401-1418) |
五男 |
第4代王 | 世宗 | 李祹 (1418年-1450) |
三男 |
第5代王 | 文宗 | 李珦 (1450-1452) |
長男(在位2年で病死) |
第6代王 | 端宗 | 李弘暐 (1452-1455) |
長男(在位4年で廃位、後に殺される) |
第7代王 | 世祖 | 李瑈 (1455-1468) |
次男(甥の端宗を廃位して玉座に就き、その後、殺害した。その後、長男の世子が病死。) |
第8代王 | 睿宗 | 李晄 (1468-1469) |
次男(在位1年で病死) |
第9代王 | 成宗 | 李娎 (1469-1494) |
次男 |
第10代王 | 燕山君 | 李㦕 (1494-1506) |
長男(在位12年で廃位、2カ月後亡くなる)※廃位の詳細 |
第11代王 | 中宗 | 李懌 (1506-1545) |
次男(クーデターで、燕山君を廃位後即位。) |
第12代王 | 仁宗 | 李峼 (1545-1545) |
長男(在位8カ月、病死または暗殺死の疑い) |
第13代王 | 明宗 | 李峘 (1545-1567) |
次男(唯一の一人息子《長男》の世子が病死。後継ぎが居ないまま病死。) |
第14代王 | 宣祖 | 李昖 (1567-1608) |
庶子(中宗と側室の昌嬪安氏の三番目の息子・徳興大院君)の三男 |
第15代王 | 光海君 | 李琿 (1608-1623) |
庶子の次男(クーデターにより廃位。その後、流刑。) |
第16代王 | 仁祖 | 李倧 (1623-1649) |
宣祖の庶子・五男定遠君李琈(元宗)の長男(唯一、国王が清国に三跪九叩頭の礼によって、屈辱を受ける。)長男の世子を、王も関与して暗殺した疑いが残っている。 |
第17代王 | 孝宗 | 李淏 (1649-1659) |
次男 |
第18代王 | 顕宗 | 李棩 (1659-1674) |
長男(在位15年) |
第19代王 | 粛宗 | 李焞 (1674-1720) |
長男(在位46年) |
第20代王 | 景宗 | 李昀 (1720-1724) |
長男(在位4年、病死または暗殺死の疑い) |
第21代王 | 英祖 | 李昑 (1724-1776) |
次男(長男は、幼く病死。次男は、王命により米櫃に閉じ込めて餓死させる。) |
第22代王 | 正祖 | 李祘 (1776-1800) |
先代英祖の孫。父思悼世子の次男(父:世子時代に米櫃に入れられ餓死による処刑) |
第23代王 | 純祖 | 李玜 (1800-1834) |
庶子次男のため孝懿王后の養子になる。(息子の長男を世子にするが、病死。) |
第24代王 | 憲宗 | 李烉 (1834-1849) |
純祖の孫(孝明世子の長男) 王統の直系が絶える。 |
第25代王 | 哲宗 | 李昪 (1849-1863) |
傍ら系の王族を養子にして即位。 正祖の異母弟と同時に庶弟・恩彦君庶子系の子孫。 |
第26代王 | 高宗 | 李㷩 (1863-1897) |
傍ら系の王族を養子にして即位。 英祖の子・思悼世子の庶子三男恩信君の養子系の子孫、後に大韓帝国初代皇帝となる。※朝鮮王国が亡国となる。 |
※西暦は、在位期間。
と、ざっと見ただけでも、ほとんどの王が嫡子の長男ではないことが分かります。
しかも、26人の王のうち、嫡子の長男である顕宗と粛宗の2名を除いて、長男が王位に就いた場合、廃位させられたり、在位期間が非常に短く、暗殺疑惑の残る病死など、不幸な死を遂げてたりしていますね。
全体的に嫡子の長男が少ないのもひと目で分かります。これには、幼少時や世子のうちに亡くなってしまい、王位に就けなかった嫡子の長男が多数存在するからです。
これを見ると、風水の占いは、本当に的中するものなのだと、馬鹿にできなくなってきますね。
それとも、大量殺戮による恨みが末代まで続いた「呪い」と見るべきなのでしょうか?
・韓国ドラマ「龍の涙」
・韓国ドラマ「大風水」
・韓国ドラマ「鄭道伝」
・韓国ドラマ「六龍が飛ぶ」
・Wikipedia(朝鮮の君主一覧)ーhttps://ja.wikipedia.org/wiki/朝鮮の君主一覧#李氏朝鮮
・韓国ドラマ「六龍が飛ぶ」
※各リンク先に「各ドラマのページ」が表示されない場合は、すでに配信が終了しています。本ページの情報は令和3年7月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。
・「龍の涙」(全159話)
・「大風水」(全35話)
・「鄭道伝」(全50話)
・「六龍が飛ぶ」(全65話)
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